「LTVを具体的にどのように算出するのか知りたい」「そもそもLTVの分析や向上の意義がよくわからない」といった悩みを抱えていませんか?
近年、LTVの重要性が語られる機会が増えました。しかし、LTVを向上させる具体的な意義や、計算方法までは説明されないことが多いようです。
そこで本記事では、LTVの計算方法や、そもそもLTVを計算する意義は何かについて解説します。BtoCで語られることの多いLTVですが、BtoBでも活用できます。BtoBセールスなどで課題を感じている方も、ぜひ最後までご参考にしてください。
LTV(ライフタイムバリュー)とは?
LTVとは「Life Time Value(ライフタイムバリュー)」の略称で、日本語では「顧客生涯価値」を意味します。1人の顧客が取り引きを開始してから終了するまでの期間に、自社にどれほど多くの利益をもたらしたのかを算出するために用いられる指標です。
1人の顧客を獲得するには、さまざまな施策を講じて多くの労力や費用を投じる必要があります。膨大なリソースを割いた顧客が短期間で自社と疎遠になってしまえば、それは大きな損失です。
LTVは、そうした機会損失を防ぎ、1人ひとりの顧客と長期間にわたって良好な関係を築いていくのに役立ちます。数回の取り引きのみで関係が終わらず、顧客に繰り返し購入や契約をしてもらえるようになれば、企業は効率よく大きな収益が得られるようになります。
LTVの計算方法
LTVの基本的な計算方法は「購入単価 × 購入回数 × 継続期間」です。ただし、商材によって計算方法は異なります。ここでは以下の3つに分けて計算方法を紹介します。
- BtoB商材
- リピート商材
- サブスクリプション型商材
計算の具体例や必要な情報も解説しているので、ぜひご参考にしてください。
BtoB商材
BtoB商材でLTVを計算する際には、1社との取り引きにおける年間取り引き額や収益率に基づき算出します。具体的な計算式は次の通りです。
BtoB商材のLTV=「1顧客の年間取り引き額 × 収益率 × 1顧客の継続年数」
例えば、あるクライアントとの取り引きステータスが以下だったとします。
- 年間取り引き額:5,000,000円
- 収益率:40%
- 継続年数:4年
この場合のLTVは「5,000,000円 × 40% × 4年=8,000,000円」です。
リピート商材
日用品など、1度購入した後も繰り返し購入されやすいリピート商材のLTVは、以下の計算式で算出可能です。いずれの値も全体の平均値から算出しましょう。
リピート商材のLTV=「購入単価 × 購入回数 × 継続期間」
例えば、自社顧客の平均購入単価、平均購入回数、平均継続期間がそれぞれ以下の数値だったとします。
- 購入単価:6,500円
- 購入回数:年5回
- 継続期間:2年
上記のケースにおけるLTVは「6,500円 × 5回 × 2年=65,000円」です。
サブスクリプション型商材
初回登録後に継続的に取り引きが発生するサブスクリプション型商材では、LTVを次の計算式で算出します。
サブスクリプション型商材のLTV=「顧客の平均単価 × 粗利率 ÷ 解約率」
例えば顧客の平均単価、粗利率、解約率が以下だったとしましょう。
- 顧客の平均単価:10,000円
- 粗利率:70%
- 解約率:10%
上記のケースでは、LTVを以下のように計算します。
「10,000円 × 70% ÷10% = 70,000円」
サブスクリプション型のように定期的に課金が発生するビジネスモデルでは、サービスの解約率(チャーンレート)まで加味しなければなりません。
解約率を加味する理由は、解約率が高まればLTVは減少するためです。LTVは「1顧客が取り引きを終えるまでの間に、企業にもたらす利益」を指します。そのため解約率の増加は、1人あたりがもたらす利益の低下につながるのです。
LTV向上はなぜ重要なのか?
計算式を用いてLTVを算出した後には、LTVの向上に努める必要があります。LTVを高めることが重要な理由は、既存顧客の維持は大きな利益につながりやすいためです。
マーケティングには「1:5の法則」と呼ばれる法則があります。新規顧客の獲得は、既存顧客との関係維持に比べて5倍のコストがかかるという通説です。これは裏を返せば既存顧客との関係性の維持に注力することで、より少ないコストで大きな利益を得られるようになることを意味しています。
既存顧客との関係維持のコストが低いのは、一度商品を購入しており、自社への愛着度合いや製品の購買意欲がすでに高いことにあります。そのため同一商品の継続購入に至りやすく、商品購入後に別商品のプロモーションをかけた際にも購入してもらいやすいのです。
既存顧客との関係性を継続していく上で役立つのがLTVです。LTV向上を目指して種々の施策を講じることで、多くの既存顧客が自社に利益をもたらしてくれるようになります。
LTV分析のメリット
LTVの計算方法について前述しましたが、LTVを計算することを専門用語で「LTV分析」と呼びます。LTV分析をすることで具体的にどのようなメリットが得られるのかも、LTV向上と共に押さえておくことが大切です。利点をしっかりと理解しておくことで、LTVで計算した数値を効果的に活用しやすくなります。
顧客の動向に応じた販売戦略を立てられる
LTV分析では、顧客の購買履歴やサービス利用状況を分析し、各顧客の購買傾向やニーズを把握します。そのデータをマーケティングや営業に活用すれば、自社の顧客特徴に応じた販売戦略を立てられるようになります。各顧客に対してやみくもに営業をするのではなく、顧客の興味関心や傾向を押さえた上でアプローチをすれば、継続利用や別の製品・プランへの新規契約に至りやすくなるでしょう。
また1人ひとりにアプローチする際にもそうしたデータを用いることで、各顧客の興味関心やステータスにマッチしたアプローチを行えます。それにより成約率を高められます。
利益構造・費用対効果の把握ができる
LTVの計算をすれば、自社の利益構造がどのようになっていて、投じた費用に対する利益がどの程度なのかを明らかにできます。利益構造・費用対効果の把握ができれば、注力すべき顧客・施策、避けるべき顧客・施策を判断できるようになります。
それまで割高な販促・営業コストをかけていた部分を減らし、見込みの高い顧客や施策により多くのリソースを割けるようになれば、効率的に顧客の獲得や維持ができるようになるでしょう。
精度の高い新規顧客獲得の計画を立てられる
LTV分析によって利益構造・費用対効果を明らかにすれば、インサイドセールスなどにおける、精度の高い新規顧客獲得の計画を立てることも可能です。
1社との新規契約により、LTV上は1社分の売上が加算されることになります。この際に新規顧客獲得コストがそのLTV加算額を超えてしまうと、新しく顧客を獲得できたものの損益上はマイナスになります。
上記の考え方は、新規顧客の獲得計画の策定に役立つでしょう。やみくもに顧客にアプローチするのではなく、自社の施策を見直し「1社分の売上>コスト額」となるように新規顧客獲得計画を立てたとします。その後策定した計画通りに実行すれば、マーケティング・営業活動でしっかりと利益を生めるようになるでしょう。
LTVと関連のある8つの指標
LTVと関連のある指標は以下の8つです。
- チャーンレート(解約率)
- リテンションレート
- MQL
- SQL
- CAC
- ユニットエコノミクス
- ARPU
- ARPA
各指標が何を意味し、どのように活用できるのかを解説します。
チャーンレート(解約率)
チャーンレートはサービスの解約率を指し、サブスクリプション型商材で活用される指標です。サブスクリプション型サービスでは、長期間にわたって利用してもらうことが重要となるため、解約率を把握して低下に努めることが重要です。
リテンションレート
リテンションレートはサービスの継続率を指し、サブスクリプション商材で使われる指標です。リテンションレートは、数値を高めることが収益性の向上につながります。
MQL
MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング活動で獲得した見込み顧客を指します。リードの中でも購買意欲が高い顧客を指し、ホットリードとも呼ばれます。購買に積極的な見込み顧客を集めることで、成約に至りやすくなり、営業活動を効率化できます。
SQL
SQL(Sales Qualified Lead)は、リードの中でも営業部門による対応が必要と判断された見込み顧客です。MQLよりも受注確度が高く、成約に至りやすいのが特徴です。MQL・SQLを把握することで、確度の高い顧客の取りこぼしを防げます。
CAC
CAC(Customer Acquisition Cost)とは、新規顧客の獲得に費やしたコストを示す指標です。広告出稿・イベント出展などで生じたマーケティング費用やセールスの人件費など、顧客獲得のために投じたすべての費用がCACに含まれます。CACは、施策の費用対効果を高めるのに役立ちます。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは、顧客1人あたりの採算性や経済性を示す指標です。ユニットエコノミクスはサブスクリプション型のビジネスで活用されることが多く、「さらにコストを投下し、顧客数を増加させるべきか」などの判断をする際に役立ちます。
ARPU
ARPU(Average Revenue Per User)は、1顧客ごとの平均売上単価を示す指標です。
通信事業のような月額課金モデルのビジネスや、スマホゲームなどのゲーム事業において、業績を評価する指標として用いられています。
ARPA
ARPA(Average Revenue Per Account)は、1アカウント当たりの平均売上単価を指す指標です。アカウントごとの売上額を示すため、同一ユーザーが複数アカウントで購入をした際には、別のアカウントとしてカウントされます。
LTVを向上させる4つの方法
LTV計算をした結果、自社の数値に問題がある場合はその改善に努めましょう。LTVを向上させていくには、以下4つの方法が効果的です。
- 購買頻度を高める
- 継続期間を伸ばす
- 平均顧客単価を上げる
- 収益率を向上させる
上記の切り口から販売戦略を見直しPDCAサイクルを回していくことで、顧客一人あたりから得られる利益を高められます。
購買頻度を高める
購買頻度を増やすには「パーソナライズ」された営業・マーケティングが有効です。パーソナライズとは、各顧客に最適化された施策を指します。
具体的には、購入から一定期間が経ち、顧客が商品を使い切りそうなタイミングで「追加注文はいかがですか」といったリマインドメールを送信するとよいでしょう。また顧客の過去の購買履歴や興味関心に基づき、商品をレコメンドするのも効果的です。
顧客の情報を細かく分析し、1人ひとりの属性やその時々のステータスに合わせた提案をすることで、購買頻度の向上が見込めるでしょう。
メルマガ配信などで継続的に有益なコンテンツ配信に努めることも、購買頻度の向上に役立ちます。ユーザーのニーズを満たせる情報を提供することで、自社や製品への関心がより高まり、さらなる購買意欲の活性化が期待できます。
継続期間を伸ばす
継続期間を高める方法の1つとして、カスタマーサポートの対応品質を上げることが挙げられます。商品やサービス自体の品質にばかり目が向きがちですが、サポート品質も顧客の維持率を向上させる上で重要です。
例えばサービスの導入後にトラブルが発生したとします。その際にカスタマーサポートの対応が悪く、スムーズに解決に至らなければ、顧客の満足度は低下するでしょう。とくにBtoBにおいては、対応の悪さはときに致命的になります。利用しているシステムの問題の発生によって、顧客が抱えるクライアントとの取り引きにまで悪影響を与えるリスクがあります。その場合、顧客がリピートに至らず他社製品へと乗り換えてしまうかもしれません。
一方で、丁寧かつ迅速に問題の解決ができれば、顧客満足度が向上し、継続利用に前向きになるでしょう。そのためカスタマーサポートの対応品質を高めることは、継続期間を伸ばすのに役立ちます。
平均顧客単価を上げる
平均顧客単価を上げるには、「クロスセル」・「アップセル」が有効です。クロスセルとはすでに提供している製品とは別の製品・サービスを購入してもらうことを指し、アップセルは同一製品のラインナップから追加で購入してもらうことを指します。すでに購入経験のある顧客は、購買に積極的で自社への関心も高いため、別の商品にも興味を持ってもらいやすいです。
BtoB企業においては、積極的にアプローチする顧客を選定することも平均顧客単価を高める上で効果的です。そもそも自社製品へのニーズが低い顧客にどれほど意欲的にアプローチをしても、売上を高めるのは難しいです。そのためよりニーズの高い顧客にリソースを割くことで、継続利用や上位プランへの切り替えが期待できます。
収益率を向上させる
収益率の向上は、とくにBtoBでLTVを高める際に役立ちます。先述の通りBtoBのLTVは「購入単価 × 収益率 × 継続年数」で算出されます。収益率が5%と20%とでは、LTVに以下のような違いが生じます。
- 5%:LTV=1,000,000円(購入単価) ×5%(収益率)×2年(継続年数)= 100,000円
- 20%:LTV=1,000,000円 × 20% × 2 年= 400,000円
そのため収益率の向上をさせられれば、LTVも大きく改善させられます。収益率を高めるための方法としては、固定費を下げることが挙げられるでしょう。収益を左右する固定費の代表例としては、次のようなものがあります。
- 一般経費
- 人件費
- 広告宣伝費
- 減価償却費
- テナント費
こうした固定費を下げることで、収益率を高められます。例えばリピーター顧客を増加させられれば、新規顧客獲得に必要な広告宣伝費を減らせるでしょう。またテナント維持に不必要に高額なコストがかかっている場合は、移転も1つの手段です。このような要領で定期的に自社の固定費を洗い出し、不要なコストを削減していくことで、収益率を向上させられるはずです。
まとめ
「新規顧客獲得に大きなコストを投じているものの、思うような成果が得られない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
そうした課題の解決に役立つのが、本記事で解説してきたLTVです。LTVの計算をしてその向上に努めることで、競合他社への顧客流出を防ぎやすくなり、既存顧客の意思決定を後押しできます。また、既存顧客獲得のコストは新規顧客の獲得費用の5分の1です。そのため、既存顧客との関係維持・発展に努めることで、費用対効果に優れた施策を講じられるようになります。ひいては、事業の収益拡大も期待できるでしょう。
本記事でご紹介した内容を、ぜひLTVの向上に役立ててください。