「スーパーバイザーになったけど何から始めていいかわからない」「仕事ができるか自信がない」など、スーパーバイザー(以下SV)という仕事に不安を抱えてる方は多いのではないでしょうか。せっかく憧れのSVになったのに心配ごとだらけでは、モチベーションが下がってしまいますよね。
そこで今回は、アウトバウンドコールセンターSVの心構えや実際の業務内容、また、仕事をラクに進めるコツについて、全くの未経験からマネージャーに昇格した私の経験を元にわかりやすく解説します。読み終わる頃には心の重荷が少し軽くなりますよ!
アウトバウンドコールセンターの目的
メールやチャットなど非対面のツールが普及する昨今、顧客と直接会話ができるコールセンターは、企業の顔となり得る重要な役割を担っています。中でもアウトバウンドコールセンターは、「電話を使った営業部隊」として企業の売り上げ拡大に貢献するのが目的です。主な業務は以下のとおりです。
・新規顧客に対し面談の約束を取るテレフォンアポイント(通称テレアポ)
・商品に興味をもつ見込み客を購入や契約に導くインサイドセールス
・商品やサービスに関する顧客の声をリサーチする電話調査
・料金未払いの顧客に対する催促業務
成果を上げるためには売りたい商品やサービスにマッチする顧客をリストアップし、スムーズに営業トークができるトークスクリプトの作成やオペレーター指導を担当するSVの力が不可欠です。
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アウトバウンドコールセンターSVに必要なスキル
SVの仕事を円滑に進めるためには、さまざまなスキルが必要です。ただしスキルや能力は一朝一夕に身につくものではなく、経験とともに培われていくもの。最初からパーフェクトなSVはいません。ここからはアウトバウンドコールセンターSVに必要なスキルを5つ解説します。
コミュニケーション能力
コールセンター業務においてコミュニケーション能力は欠かせません。なぜなら顧客に商品をアピールするためには、顧客の要望や困りごとを聞き出す必要があるからです。自分の気持ちを理解してくれない人から商品を買おうとは思いませんよね?また、オペレーターや上司、仲間と良好な人間関係を作るためにもコミュニケーションは欠かせません。
かくいう私はもともと人付き合いが苦手で、自分の方から積極的に声をかけるタイプではありませんでしたが、SVを経験したおかげで人との会話が怖くなくなりました。べったり仲良くする必要はありませんが、どの立場の人とも話しやすい関係性を作っておくことがSVの仕事をスムーズに進めるコツです。
傾聴力
傾聴力はいわゆる「聞く力」といわれるものですが、もう一つ大切なのは「聴く力」です。「聞く力」が言葉や話の内容を正確に聞き取る力であるのに対し、「聴く力」とは相手の真意を汲み取る力のことです。
後述しますが、SVの業務の一つにクレーム対応やオペレーターとの面談があります。どちらも相手の言い分をしっかりと聞いた上で、「この人は何がしたいんだろう」「どんな気持ちなんだろう」と察し、「〇〇だったんですね...」「お気持ち、よくわかります...」などと心情を復唱してあげることができれば、相手との距離がグッと縮まりますよ。
分析力
コールセンターにおける分析力とは、顧客対応の履歴やオペレーターのパフォーマンスを数値化した「KPI」などから問題点を分析し、成果の向上につなげる能力のことです。中でもアウトバウンドコールセンターは、架電数や実際に会話ができた割合によって成果が大きく異なるため、KPIの把握と分析が欠かせません。「私、数字に弱くて...」という方でも大丈夫!SVのデスクにはKPIの状況がリアルタイムでわかるモニターがあるはずですので、まずは画面を見ながら現状を把握する習慣をつけることから始めましょう。モニターを見ながら同時に別の作業をする、というのがSVのルーティンです。
問題解決能力
SVは現場で発生するさまざまなトラブルや問題に対して冷静に対処し、解決策を見つける問題解決能力が必要です。コールセンターが「顔の見えない顧客との接客業」であるかぎり、苦情やお叱りの処理は日常茶飯事。時にはオペレーターの退職や仲間同士の喧嘩の仲裁など、数えればキリがありません。
問題解決能力は経験がものを言うスキルですが、SVに抜擢された方なら多くの経験を積んでいるはずです。まずは慌てず、目の前に起きていることを冷静に受け止める覚悟で望みましょう。
マネジメント能力
コールセンターにおけるマネジメント能力とは、目標を達成するために計画を立て、実行する能力のことです。「マネジメントってマネージャーやセンター長の仕事じゃないの?」と思うかもしれませんが、現場でのマネジメントはほとんどSVの仕事です。
オペレーター時代は管理される立場だったものが、これからは管理する立場になったと考えるとわかりやすいでしょう。自分にはそんな能力はない...などと嘆くことはありません。不慣れなうちはマネジメント能力の一つである「リーダーシップ」を意識し、オペレーターがやる気になる声掛けや、活き活きと仕事をする自身の姿を見せることが何よりのマネジメントになりますよ。
アウトバウンドコールセンターSVの仕事内容は?
ここからは、アウトバウンドコールセンターSVの具体的な仕事内容について解説します。SVの仕事は想像以上に多く、手当たり次第にとりかかっても中途半端になりがちです。カレンダーを活用して優先順位を考えながらスケジュールを組むことから始めましょう。
オペレーターの育成・管理
SVの仕事として最も重要で、かつエネルギーを使うのがオペレーターの育成と管理です。
具体的には、
・オペレーターの採用計画
・新人研修やスキルアップ研修の実施
・応対品質向上のためのモニタリングとフィードバック
・個人面談によるメンタル面のフォロー
などがあげられます。
中でも一番手間のかかるのが新人の育成です。なぜならせっかく苦労して研修しても、ほどなく辞めてしまうオペレーターが少なくないからです。デビュー後は随時モニタリングを実施して不明点を解決する、良いところは褒めて自信を持たせるなどのフォローもSVの大切な仕事です。コールセンターは離職率の高い仕事と言われていますが、「研修しっぱなし」が逆に自分たちの首を絞めることを肝に銘じなければなりません。
トークスクリプト・マニュアルの作成
トークスクリプト・マニュアルの作成や見直しもSVの大切な仕事の一つです。トークスクリプトは目的地にたどり着くまでの地図のようなもの。無事に目的地にゴールするためには、無駄がなく、かつ最後まで話を聞いてもらえるようなシナリオを作成する必要があります。
特にテレアポは、トークスクリプトの良し悪しで獲得率が大きく異なります。
具体的には、挨拶→自己紹介→フロントトーク→本題→共感→クロージング→日程調整という流れが好ましく、フロントトークでいかに相手の興味をひきつけるかがポイントです。またマニュアルも、商品やサービスの変更に伴うバージョンアップをお忘れなく。
KPI管理
KPIとはオペレーターのパフォーマンスを数値化したものです。SVはKPIの数値から課題や問題点を分析し、目標達成に尽力しなければなりません。
アウトバウンドコールセンターに必要な主なKPIは以下のとおりです。
コール数 | 発信件数 |
コンタクト率 | 電話が繋がった件数の割合 繋がった件数÷コール数 |
ATT(平均通話時間) | お客様と対応した平均時間 通話時間の合計÷コール数 |
ACW(平均後処理時間) | 通話後の後処理にかかった平均時間 後処理時間の合計÷コール数 |
CPC(平均架電単価) | 1通話当たりにかかるコスト 総コスト÷コール数 |
ミス率 | ミスが発生した割合 ミスの件数÷コール数 |
成約率 | 成約に至った件数の割合 成約の件数÷コール数 |
例えば、ACW(平均後処理時間)が短縮できれば、その分コール数を増やしてコンタクト率を上げ、成約率アップにつなげることも可能です。また、コール数は目標値に達しているのにコンタクト率が低い場合は、トークスクリプトや架電する時間帯を見直すなどの工夫が必要でしょう。
架電先リストの作成
テレアポで成果を出すためには、商品やサービスに見合った顧客に架電する必要があります。なぜなら、仮にアポイントが取れたとしても受注に繋がらないような「精度の低いアポイント」ばかりでは良い納品とは言えないからです。つまり、リストの出来によって成果が変わるといっても過言ではなく、SVは社内で集めた顧客データを元に、ターゲットを絞ったリスト作りが求められます。
またリストの作成だけに留まらず、架電の進み具合を見ながらパフォーマンスの良いオペレーターにリストを振り分けるなどの工夫も必要でしょう。
クレーム処理などの二次対応
SVになったからには、クレーム処理などの二次対応を避けて通ることはできません。アウトバウンドコールセンターで発生しがちなクレームは、「いきなり商品を売りつけられた」「忙しい時間帯にかけてきて一方的にしゃべられた」「いらないと言っているのに電話を切ってくれなかった」などです。
クレーム処理でやりがちなのが、相手の言葉を遮って説き伏せようとすること。怒りがヒートアップするだけで何の解決にもなりません。まずは不快な想いをさせてしまったことをお詫びし、適度に相槌を打ちながら言い分を聞き、顧客の気持ちを鎮めることが先決です。
難しいクレームの場合は一人で解決しようと思わず、リーダーSVやマネージャーに相談してアドバイスをもらいましょう。もしくはリーダーSVやマネージャーに三次対応を依頼することも一つの手です。クレームに備え、二次対応者と三次対応者を明確にしておきましょう。また、二次・三次対応をする際は事前に音声ログなどを確認し、顧客がクレームや苦情に至った原因や心情を理解してから始めるのもポイントです。
ちなみに私が在籍していたセンターでは、SVのほかにオペレーターのサポート役としての「リーダー」や「SSV(サブスーパーバイザー)」というポジションがあり、最初の二次対応はサポート役に任せ、解決しなければ最終的にSVが登場するというパターンを多用していました。センターの規模によっては難しい場合もありますが、切り札を残しておくという作戦は効果的でしたよ。
シフト作成や勤怠管理
オペレーターのシフト作成や勤怠管理もSVの仕事です。最近は、オペレーターに事前に提出してもらった勤務の希望をもとにシフト調整するセンターが多いと思いますが、一人一人の希望に合わせるのは至難の業。人が足りない場合は、SV自ら出向いて勤務のお願いをすることも少なくありません。
また、コールセンターにつきものなのが突発休。なぜか月曜日に多く、SVはしばしば頭を抱えます。そんな時は、オペレーターの休憩時間を変更してつながりやすい時間帯に人を確保したり、リーダーやSSVを架電要員に配置したりと、できる限りの工夫をしてやりくりします。SVの腕の見せ所ですね。
クライアント対応
アウトバウンドコールセンターの中には、BPOコールセンターといって外部からの委託を受けて一連の電話業務を行うセンターがあります。
BPOコールセンターでは委託元(以下クライアント)からの要望に基づき、応対品質や生産性の向上などに尽力しなければなりません。
そのためにはクライアントの要望や連絡事項を聞き取る、業務終了後にコール件数やアポイント獲得件数を報告するなどの業務が発生します。
クライアントと直接会話をするのは非常に緊張しますが、要望を真摯に受け止め、成果につなげたいという気持ちさえあれば、いたずらに恐れる必要はありません。
私もSVになりたての頃は、クライアント対応なんてマネージャーがやってくれればいいのに...などと思ったこともありましたが、それは「SVは現場責任者」という自覚が足りなかった頃のこと。現場を回しているのは自分であることを、今一度自覚してくださいね。
アウトバウンドコールセンターSVの仕事がラクになる5つの秘訣
SVはコールセンターの中で一番仕事量の多いポジションであり、仕事に追われていると感じても無理はありません。特にアウトバウンドコールセンターの場合は、目に見える成果を求められるためプレッシャーに感じることも多いでしょう。とはいえ自身の努力や工夫によって成果につながった時の達成感は、この上ない喜びです。
最後に「SVの仕事をラクに進める秘訣」を5つご紹介します。
オペレーターの良き相談相手となる
コールセンターで働いたことのある皆さんなら経験があると思いますが、SVの雰囲気次第でコールセンターの空気はガラッと変わります。ギクシャクして冷たい雰囲気の中ではオペレーターのモチベーションも上がりません。その点、あなたが「声をかけやすい」「話を聞いてくれる」SVであれば、頼れるSVというイメージが定着し、指示にも耳を傾けてくれるでしょう。
ただし、あくまでも仕事上での相談相手と割り切ること。なぜなら仲良くなりすぎると公私混同して「上司」という自覚が薄れてしまうからです。適度な距離感の中で良き相談相手となることが、SVの仕事をやりやすくするポイントですよ。
リーダーやSSV(サブスーパーバイザー)に仕事を振り分ける
SVの仕事は多岐にわたり、すべての仕事を一人で完璧にこなそうと思うと無理が生じます。リーダーやSSVに仕事を振り分けるのもSVの仕事と捉え、部下の繁忙ぶりに配慮しながら自身の仕事を減らす工夫をしてみましょう。とはいえ慢性的に人手不足の昨今、頼める人がいないという場合も少なくありません。その場合は仕事の優先順位を決め、キャパオーバーになる前にマネージャーに相談することです。
私の経験上「自分の努力でなんとかしよう..」と思って疲弊するより、「人の力を借りる」という心構えを持つほうがうまく行きますよ。
上司や仲間とのコミュニケーションを欠かさない
コールセンターは一般的に、センター長、マネージャー、SV、SSV、リーダー、オペレーターという組織で成り立っています。コールセンターの規模にもよりますが、SVも数人在籍していることが多く、SV仲間や上司との人間関係は仕事のモチベーションを大きく左右します。人間なので人の好き嫌いがあって当然ですが、コールセンターが一つのチームで成り立っている以上、円滑な人間関係は仕事を進める上で欠かせません。
あまり気構えることはありませんが、日頃から意識して会話をしたり、先輩SVに相談にのってもらうなどのコミュニケーションを取ったりしておきましょう。「馬が合わないSV」にも助けてもらう日がきっと来ますから。
chatGPTなどのツールを活用する
煩雑なSVの仕事をラクにするコツは、業務が合理化できるツールを使うことです。その一つが「chatGPT」。コールセンターでchatGPTが使える範囲は未知数ですが、最も得意とする「文章作成」を活用すれば文章を一から作成する必要がなく、稼働時間の削減につながります。例えば、「オペレーターの不躾な態度に関するお詫び文書を作って」などと指示してクレーム対応に活用したり、「〇〇を販売するトークスクリプトを作成して」と指示して、研修資料を作成したりすることも可能です。
ただし、指示の仕方によっては間違った情報を提示する場合もあるので、あくまでもたたき台として活用するのが良いでしょう。
ストレス解消法を持つ
SVの仕事がラクになる最大の秘訣はズバリ、ストレス解消法を持つことです!仕事ができる人は得てして自己管理が上手だと言われています。自己管理の大切さはどんな仕事にも当てはまることですが、特にコールセンターSVのように仕事量も多く、一日中コール音や会話の中で過ごす環境は決して健康的とは言えません。おまけにクレーム対応につかまって理不尽な要求をされようものなら、心身ともに疲れ切ってしまうこともあるでしょう。ダメージは、蓄積して化石のように固くなる前に解消しておかなければなりません。ストレス解消法を持ち、オン・オフを上手に切り替えることが楽しく仕事を続けるコツですよ。
まとめ
アウトバウンドコールセンターSVの心得として大切なのは、自分が現場責任者であるという自覚と人間関係づくり、そして自身の力を最大限に発揮するための自己管理を怠らないことです。かつて私は、「未熟な私がSVなんて...」と思っていましたが、今思えば、むしろ未熟だったからこそ日を追うごとに自身の成長を実感することができ、続けてこられたのだと思います。
今や仕事のできるSVは、どのコールセンターからもひっぱりだこ。SVのスキルが役に立つ日がきっと来ますよ!
執筆者:kinyan.net